フォワーディングデータベース

フォワーディングデータベース

1. 機能概要

フォワーディングデータベース(以降、FDB)は、 宛先MACアドレスと送出ポートとVLANの組み合わせを管理するものです。
本製品は、受信フレームの転送先ポートを決定する際に使用します。

  1. 学習機能の有効/無効制御

  2. 学習したFDBエントリの保持時間の調整

  3. 学習したFDBエントリのクリア

  4. FDBエントリの手動登録(スタティックエントリ)

2. 用語の定義

FDB

Forwarding Data Base の略です。
宛先MACアドレスと送出ポートと VLAN の組み合わせを管理するデータベースです。

FDBエントリー

FDBに登録するデータのことで、複数の要素で構成されます。

3. 機能詳細

3.1. FDBエントリー

本製品は、FDBに対して下表に示す内容を一つのエントリーとして登録します。

管理要素 説明

MACアドレス

デバイスのMACアドレス、ユニキャストとマルチキャストがあります。

VLAN-ID (FID)

デバイスの所属するVLAN ID。1~4094の値となります。

転送先インターフェースID

デバイスが存在するインターフェース*。
(*:LANポート or スタティック論理インターフェース)

アクション

デバイス宛てフレームの処理方法。
処理方法には、破棄(discard)と転送(forward)があります。

登録種別

エントリの登録種別。以下の種別があります。
* dynamic …​ 自動学習により登録されたエントリー
* static …​ コマンドにより手動で登録したエントリー

3.1.1. MACアドレス

FDBのキー項目の一つで、VLAN-IDとMACアドレスの二つを合わせてレコードキーになります。
MACアドレスが、ユニキャストの時と、マルチキャストの時では、動作に違いがあります。

  • ユニキャスト
    あるレコードキーに対して、転送先インターフェースIDは、一意に決まる必要があるので、重複は認められません。
    (同じ、VLAN-IDとMACアドレスの組み合わせは複数存在しない)

  • マルチキャスト
    あるキーレコードに対しての、転送先インターフェースIDは、複数個存在しても構いません。
    その場合、複数の転送先インターフェースIDに、転送されます。

本製品は、自動学習/手動登録合わせて 最大8,192個のアドレス を登録できます。
すべての受信フレームをMACアドレス学習の対象とし、送信元MACアドレスを学習してFDBに登録します。
(ただし、送信元MACアドレスがマルチキャストの場合は、これを不正なフレームとみなして破棄し、登録しません。)

自動学習で登録したMACアドレス情報は、エージングタイムアウトまで保持します。

3.1.2. VLAN-ID

MACアドレスの学習はVLAN単位に行い、FDB は MACアドレス と VLAN のペアで管理します。
異なるVLANであれば、同一のMACアドレス情報も学習します。

3.1.3. 転送先インターフェースID

登録されるIDは下記となります。

  • LANポート (port)

  • スタティックインターフェース (sa)

3.1.4. アクション

キーレコードと一致した受信フレームに対してのアクションを定義します。
MACアドレスが、ユニキャストの場合は、下記のアクションになります。

  • forward … 転送先インターフェースIDに転送します。

  • discard … 転送せず破棄します。

MACアドレスがマルチキャストの場合は、下記のアクションになります。

  • forward … 転送先インターフェースIDに転送します。

  • discard … 設定できません。
    (MACアドレスがマルチキャストの場合、discardは設定できません。)

3.1.5. 登録種別
  • dynamic …​ 自動的に登録、削除が行われます。configファイルには、登録結果は残りません。

  • static …​ 手動で登録、削除するため、configファイルに残ります。

3.2. MACアドレスの自動学習

MACアドレスの自動学習とは、受信フレームの送信元MACアドレスと受信ポートの情報に基づいてFDBエントリーを動的に作成し、登録していくことを指します。
この自動学習により登録されたエントリーを ダイナミックエントリー といいます。
個々のダイナミックエントリーに対して、タイマー(エージングタイム)による監視が行われます。
一定時間フレーム受信がなかったMACアドレスに対するエントリーは、FDBから削除されます(後述*)。
これにより、電源断、移動などで無効になったデバイスのエントリーが、FDBに残らないようになっています。
なお、時間内に再度受信があった場合は、監視タイマーがリセットされます。

以下に自動学習の制御仕様について示します。

  1. MACアドレスの自動学習は、 mac-address-table learning コマンドを使用して、有効/無効の制御が可能です。
    初期状態では、有効となっています。

  2. 自動学習が有効な状態から、無効に変更すると、 学習したダイナミックエントリーはすべて削除 されます。
    なお、学習機能・無効の設定は、すべての受信フレームを全ポートにフラッディングしたい場合に有用です。

  3. ダイナミックエントリーに対するエージングタイムの調整は、 10~634秒 の指定を可能とし、 mac-address-table ageing-time コマンドで行います。
    初期状態では、300秒が設定されています。

  4. 学習したダイナミックエントリーのクリアは、 clear mac-address-table dynamic コマンドで行います。
    クリアする単位として、全FDB内容を一括クリアする指定のほかに、VLAN番号を指定することで指定VLANとして学習した全MACアドレスをFDBからクリアします。
    また、ポート番号を指定することで指定ポートから学習したMACアドレスをFDBからクリアすることもできます。

  5. 自動学習の状態を確認するには、 show mac-address-table コマンドを使用します。

  6. mac-address-table ageing-time コマンドで設定した時間と、実際にダイナミックエントリーがMACアドレステーブルから削除されるまでの時間との間で、誤差が生じる場合があります。

3.3. MACアドレスの手動設定

本製品は、受信フレームによる自動学習のほかに、ユーザーのコマンド操作でMACアドレスを設定することができます。
コマンド操作で登録したエントリーを スタティックエントリー といいます。

以下に手動設定についての仕様を示します。

  1. スタティックエントリーの登録は、 mac-address-table static コマンド を使用します。

  2. 手動で登録できるスタティックエントリーの数は 256個 です。

  3. スタティックエントリーの登録を行うと、そのMACアドレスに対してダイナミックな学習は行いません。
    学習済みのエントリは、FDBから削除され、スタティックエントリーとして登録されます。

  4. スタティックエントリーの削除は、 no mac-address-table static コマンド を使用します。

  5. 受信フレームの宛先MACアドレスに対して転送(forward)か廃棄(discard)かを指定可能とします。

    • 転送指定を行う場合、転送先のLANポート、またはスタティック論理インターフェースを指定することができます。

    • 廃棄指定を行った場合、MACアドレスに対する受信フレームは、どのポートにも転送せずに廃棄します。

  6. マルチキャストのMACアドレスを登録する場合、廃棄(discard)は指定できません。
    また下記の範囲にあるMACアドレスは登録できません。

    • 0180.c200.0000~0180.c200.000f

    • 0180.c200.0020~0180.c200.002f

4. 関連コマンド

関連コマンドについて、以下に示します。
詳細は、コマンドリファレンスを参照してください。

操作項目 操作コマンド

MACアドレス学習機能の有効・無効設定

mac-address-table learning

ダイナミックエントリー エージングタイムの設定

mac-address-table ageing-time

ダイナミックエントリーの削除

clear mac-address-table dynamic

スタティックエントリーの登録

mac-address-table static

スタティックエントリーの削除

no mac-address-table static

MACアドレステーブルの参照

show mac-address-table

5. コマンド実行例

5.1. FDBの参照

Yamaha#show mac-address-table
VLAN  port     mac             fwd      type     timeout
   1  port1.2  00a0.de11.2233  forward  static        0
   1  port1.1  1803.731e.8c2b  forward  dynamic     300
   1  port1.1  782b.cbcb.218d  forward  dynamic     300

5.2. ダイナミックエントリーの削除

FDBに登録されているFDBエントリー ( MACアドレス00:a0:de:11:22:33 )を削除する

Yamaha#clear mac-address-table dynamic address 00a0.de11.2233

5.3. ダイナミックエントリー エージング時間の変更

ダイナミックエントリーのエージング時間を 600秒 に変更する。

Yamaha(config)#mac-address-table ageing-time 600

5.4. スタティックエントリーの登録

VLAN #10に所属するデバイス (MACアドレス 00:a0:de:11:22:33) 宛てフレームをLANポート2 (port1.2) に転送する。

Yamaha(config)#mac-address-table static 00a0.de11.2233 forward port1.2 vlan 10

VLAN #10に所属するデバイス (MACアドレス 00:a0:de:11:22:33) 宛てフレームを破棄する。
インターフェース名の指定(例ではport1.2)は、動作に影響ありません。省略不可のため、LANポートを指定してください。

Yamaha(config)#mac-address-table static 00a0.de11.2233 discard port1.2 vlan 10

5.5. スタティックエントリーの削除

VLAN #10に所属するデバイス (MACアドレス 00:a0:de:11:22:33)宛ての転送設定を削除する。

Yamaha(config)#no mac-address-table static 00a0.de11.2233 forward port1.2 vlan 10

6. 注意事項

特になし

7. 関連文書

特になし